原子の構造
前回の学習で電解質は水に溶けると陽イオンと陰イオンに分かれることを学びました。

水に溶けるだけで大変化するんだったね!
そう!電気を流さなかった食塩が食塩水になると電流を流すようになるなんてビックリですね。
さて、なぜそんな大変化が起こるのでしょうか?原子に注目して考えてみましょう!
電解質を水に溶かした時の「原子」の変化を学ぼう!
食塩の状態では電流が流れなかったのに、イオンになると電流が流れるようになったことから、食塩の分子とイオンでは性質が全然違うことが分かりましたが、具体的にどう違うんでしょうか?

電子がポイントになりそうだ!
そうなんです。原子とイオンの違いには“電子”が関係しているんです。
イオンの謎を解くためには、原子の構造を知ることが大切です!
原子の構造はこんな感じになってます。(今回はヘリウムを例にしています)


原子はそれ以上分けられないんじゃなかったの?
そうなんです!実は原子を細かく見るといくつかの粒によって構成されているんです。

さて、ヘリウム原子の「陽子と電子の数」に注目してください。

陽子と電子は同じ数だ!
それが原子のポイントです。+の電気をもっている陽子と-の電気をもっている電子を同じ数持っているから原子は電気を帯びていないんです。

イオンは違うの?
そう!イオンは違う!だからイオンは電気を帯びているんです。
例えば、塩素原子はイオンになると、-の電気を帯びたイオンになります。だから電子を渡すことができるんです。

+のイオンか-のイオンかはどうやって決まるの?
それは、原子が何個の電子をもっているかで決まります。そして陽子の数と原子番号は同じなんです!

原子番号って周期表に書いてあるやつだよね
はいそうです!周期表を見てみましょう。
ヘリウムは原子番号が2番だから2つの陽子を持っていることがわかりますね。
原子番号と原子が持つ陽子の数は同じ
さて、この周期表ですが、なんだか変な形をしていますよね?

この形疑問だった!
この理由は電子と原子の関係にあるんです!

電子は原子核の周りを回っているんだよね!
そうです!
ただ、電子は原子核の周りを決まった数ごとに輪になって回っているんです。

決まった数?
原子核の周りを回ることができる電子の数をアルゴンをモデルに見てみましょう!
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内側から2・8・8になってるんだね!
この数が原子のポイントなんです!
さて、ナトリウムの構造を見てみましょう。原子番号はわかりますか?

11番!
大正解!ということは陽子を11個持っているんだから、その周りを電子が11個回っているはずですね。
さっきの2-8-8のモデルで書いてみると、


なんか1つだけかわいそうだね
そうなんです!この1つの電子を外に出すとナトリウムにとっては安定した状態になります。

安定した状態って?
原子にとっての安定とは、反応しにくい状態のことです。原子たちは自分が安定した状態になれるように振る舞うんです。
さて、一番外の電子が外に出てしまう原子はどうなるでしょうか?

電子が1個なくなった分、もともと11個あった-の電気は10個になりますが、ナトリウムの原子核の中にある+の電気をもつ陽子の数は11個のままだから、+の電気の方が多い状態になります。

ということは+の電気を帯びてるんだね
はい、だからナトリウム原子は電子を放出して+の電気を帯びたナトリウムイオンになります。
+の電気を帯びたイオンを陽イオンというんでしたね。


+の電気をもってるから陽イオンだったね
はい、つまり陽イオンになりやすい原子は電子を放出しやすいってことです!

原子が電子を放出すると陽イオンになる
陰イオンになる原子

陽イオンのでき方はわかったけど、陰イオンはどうやってできるの?
陽イオンは原子が電子を放出してできていました。
陰イオンの場合はその逆で、原子が電子を受け取ってイオンになります。
陰イオンになる塩素原子をモデルにして考えてみましょう!さて、塩素の原子番号は何番でしょうか?

17番!
ですね。2-8-8のモデルで同じようにイオンを考えてみましょう。

17個だと1つ足りない感がありますよね。
この足りない場所に電子が入ることで塩素は安定して、結果として陰イオンになるんです。


陽子が17個、電子が18個だから-の電気になるんだね

電子を放出する原子は陽イオンに
電子を受け取る原子は陰イオンになる
食塩(塩化ナトリウム)の電離
陽イオンと陰イオンがあることをふまえて、食塩の電離を考えてみましょう。
食塩はNaとClが結合してできていますよね。この食塩を水に溶かすと結合がとれてイオンになるんでした。

ナトリウムイオンと塩化物イオンに電離するんだね
はい、ちょっと電離する前の固体の塩化ナトリウムに注目しましょう。
ナトリウム:電子が1つ余っている
塩素:電子が1つ足りない
という状態でしたね。この関係があるから水に溶かすとわかれて電離するんでした。

分子(固体)の状態では、電子がこのように配置されています。


ナトリウムの電子が塩素の中に入っているんだ!
だからナトリウム原子と塩素原子がくっついて塩化ナトリウム分子になることができるんですね!
塩化ナトリウム分子は電子を共有している
だから水に溶かすと電子はそのままで2つに分かれるから
ナトリウムイオン(陽イオン)と塩化物イオン(陰イオン)になるわけです。


電離には電子配置が関係しているんだね!
周期表とイオンの関係
周期表が頭に入っているとイオン式を全部覚えなくても大丈夫になります!

それは知りたい!
コツはイオンになる原理を理解することです。
電子を1つ放出すると1価の陽イオンになり、電子を2つ放出すると2価の陽イオンになります。(H⁺は1価の陽イオン、Ca²⁺は2価の陽イオン)
逆に電子を1つ受け取ると1価の陰イオン、2つ受け取ると2価の陰イオンになります。(Cl⁻は1価の陰イオン、S²⁻:硫化物イオンは2価の陰イオン)
原子は一番外の電子をピッタリの数にしたいんです!
これを考えればそれぞれの原子が電子を出すのかもらうのかが簡単にわかるんです!
電子を受け渡しして、電子を18個持った状態になる原子番号17~20の原子の電子配置を見てみましょう。


陽子の数は原子番号のままだね!
電子の配置は同じですが、原子核の中の陽子の数が違うから帯びている電気が違います!

アルゴンだけは原子のままでイオンにはならないんだね
周期表の一番右の列にある18族の「貴ガス(希ガス)」は電子をピッタリ持っているから安定しています。
例えば、10番のネオン(Ne)はネオンサインに使われるなど、貴ガスは身の周りにも使われていますし、安定な物質なので空気中にも存在しています。
1族の原子は1価の陽イオン、2族の原子は2価の陽イオンに
17族の原子は1価の陰イオン、16族の原子は2価の陰イオンになりやすい

原子の番号を知っておくとどんなイオンになるかわかるんだね!
はい、20番以降の原子は遷移元素呼ばれ、少し複雑なので、20番以降のものについてはしっかりと覚えておきましょう!
イオンを考えるコツ
もう1つイオンを考えるコツがあります。
これは化学式を知っていれば知っているほど得な方法です。
化学式は電気を帯びていない状態だから、電離した時の陽イオンの+の数と陰イオンの-の数は一緒になります。
例えば、塩酸はHとClで出来ているから、水素がH⁺になることを知っていれば、水素が1つの+の電気を持っていることがわかって、残ったClは1つの-(1価の陰イオン)になることがわかります!

分子全体で電気は±0になることを利用してるんだね!
これを利用すれば、水素がイオンになるとH⁺になることだけ覚えておけば、化学式によって、どんなイオンになるかわかります!

イオンは覚える必要はないね!
はい!イオンの原理が分かれば、暗記は必要ありません!(遷移元素は少し違うので有名な金属イオンは覚えた方がいいかも)
原子は+の電気を持つ陽子と-の電気を持つ電子を持っている
原子核の周りをまわる原子の数をピッタリにするために陽イオン・陰イオンになる
原子番号は原子が持つ陽子の数を表している
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