だ液に含まれる消化酵素のはたらきを実験で詳しく調べよう!

目次

だ液によって物質を変化させよう

口噛み酒を知っていますか?

映画「君の名は。」の中でヒロインが三葉が神社で作っていた、米やいもを噛んでから吐き出してつぼなどの中にためてつくられるお酒のことです。

米などのデンプンはだ液によって発酵してアルコール(お酒)ができます。これはだ液の中に含まれるアミラーゼという消化酵素のはたらきによってデンプンが分解されたからです。

アミラーゼはどのようにデンプンを別の物質に変化させているんでしょうか?

今回はだ液とデンプンを水に溶かした液を使ってアミラーゼのはたらきについて調べようと思います!

だ液を使った実験

だ液とデンプン溶液を使って、だ液によってデンプンが何に変化するのかを調べます。

実験操作

だ液の有無によって、デンプンがどのように変化するか調べるために、デンプンを水に溶かした溶液の片方に水だけを、もう片方にだ液を加えて実験を行います。

だ液は体の中ではたらくので、そのはたらきを最大にはたらかせるには、だ液が機能する場所である口の中と同じ環境にする必要があります。

そのため、口の中の環境と同じ36℃くらいの温度にしたお湯の中に試験管を入れて、時間を置きます。

10分後(長いほどよく反応する)にだ液なしとありをそれぞれ2つの試験管に分けてヨウ素液ベネジクト液を加えます。

デンプンは炭水化物のかたまりなので、ヨウ素液を使うとデンプンが存在するかどうか調べることができるので、デンプンとだ液を反応させた後にヨウ素液をかけて反応がなければ、だ液によってデンプンが分解されたことがわかります

ベネジクト液は青色の液体で、糖と反応すると赤褐色の沈殿をつくります。

ただ、ベネジクト液は加えるだけでは反応しないので、加えた後に沸騰石を入れて加熱する必要があります。

このように実験を行い、4本の試験管の色の変化を見てみましょう!

結果

試験管の色から、だ液のはたらきを考えていきます。

 ヨウ素液ベネジクト液
だ液なし

青紫色デンプンがある

青色→変化なし

だ液あり

黄茶色→デンプンがなくなった

オレンジ(赤褐色の沈殿)糖ができた

だ液なしの試験管では、ヨウ素液の反応が見られたことから、デンプンがそのまま残っていることが確認できます。

だ液ありの試験管では、ヨウ素液の反応からは、もともと入っていたデンプンがなくなったことがわかります。

また、ベネジクト液の反応からは、写真では、オレンジ色になっていますが(反応時間が短かかったからと思われる)赤褐色の沈殿と考えて、糖ができたことがわかります。

つまり、ヨウ素液とベネジクト液の反応を2つ合わせると、だ液によってデンプンが糖に変えられたと言えます。

なぜ糖ができたかというと、だ液の中に含まれるアミラーゼという消化酵素のはたらきよって反応が起きたからです。

消化酵素の種類などについてはコチラ

消化酵素のはたらき

アミラーゼによってデンプンが糖に変わったことがわかりましたが、これはいったいどんな変化なのでしょうか?

そもそもデンプンは、糖がつながってできたものです。アミラーゼの役割はこのつながりを切って、デンプンを糖の状態に変えることなんです。

アミラーゼがデンプンを切る反応によって、アミラーゼが化学変化して別の物質になることはありません。つまり、一度どこかの結合を切ったアミラーゼはまた別のどこかの結合を切ることができるというわけです。はさみをイメージするとわかりやすいです。

このように自らは変化せず反応をはやめる触媒の作用をもつ物質酵素と呼んでいます。

アミラーゼが何度も結合を切ることができるため、時間を長くすればするほど糖への変化は進みます。最初に出てきた口噛み酒もだ液を混ぜてそのままにしておくことでどんどん反応が進んでいったというわけですね。

つまり、消化酵素は少ししかなくても反応させることができるが、めちゃくちゃ時間がかかるというわけですね。消化酵素の数×時間で考えてもらえればいいと思います。

ちなみに、イラストでは、糖が1つ1つ完全にバラバラになっていませんが、アミラーゼの機能では完全に切ることはできません。

だ液以外のすい液や小腸の壁の液によって最終的に1つ1つバラバラになったブドウ糖に変化するのです。

だ液は36℃の条件で機能するといいましたが、だ液以外の消化液で例えば胃液中に含まれる消化酵素であるペプシンは胃の中にあるため強い酸性中で機能し、中性の条件ではほとんど機能しません。だ液も冷水や熱湯の中では機能しません

このように酵素には適切な温度やpH(酸やアルカリの強さのこと:3年化学)がそれぞれあります

また、アミラーゼは炭水化物(デンプン)しか分解することができず、タンパク質や脂質とは反応しません。酵素は決まった物質(基質)にしか反応しないんです。これを基質特異性といいます。

まとめ

だ液中のアミラーゼデンプンを糖に変える

ベネジクト液を加えて加熱した時に赤褐色の沈殿ができれば糖があることがわかる

消化酵素は最適な条件があり、特定のものに何度でも反応する

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この記事を書いた人

私立中・高一貫校の現役理科教員です。
専門は生物学で、中学・高校理科の教員免許を持っています。
子供のころ勉強に使っていた学習サイトを自分でも作りたくでトライし始めました!
理科の授業を「何度でもふりかえる」ことが出来るように、知識+思考力がつくサイトにしていくのでよろしくお願いします!

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