DNAってどんなもの?
DNAという言葉を聞いたことがあると思います。なんとなく遺伝に関わっているということを知っている人も多いと思います。
ちなみに、DNAはデオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic acid)という物質の略語です。
今回はDNAの正体と利用方法について学んでいきましょう!
世界には研究者と呼ばれる人がたくさんいます。
ニュートンやアインシュタイン、ガリレオなどが思い浮かぶと思います。
ニュートンやガリレオは300年以上前に活躍した物理学をメインに研究した人です。物理学の歴史はかなり古いんです。例えば、ニュートンが万有引力を発見したのは1666年と350年ほど昔です。
しかし一方、生物学の歴史はかなり浅く、ここ100年で大きく進歩してきていますが、まだまだ分からないことも多いです。今後の成長が楽しみな分野ですね。
メンデルが1866年に遺伝の法則の論文を出して以降、遺伝子の研究が行われはじめ、1944年にエイブリーによって遺伝子の本体が染色体に含まれるDNAという物質であることを発見しました。
その後の1953年、生物学者のワトソンと物理学者のクリックがDNA分子が二重らせん構造という特殊な構造をしていることを発見しました。
このようにDNAが発見され、その構造が分析されたのはここ100年以内のことなんです。万有引力の350年と比べるとだいぶ最近のことですね。
DNAの役割と構造
DNAは生物の体の設計図のようなもので、DNAにかかれている通りに体を作るもととなるタンパク質をつくります。DNAの中は、「どこに、どんなものを、何個、どのくらいの大きさで、」という情報が入っています。
生物たちは環境の変化に合わせて少しずつDNAを変化させてきました。
例えば、気温が高いところに住むウサギは熱を外に出しやすくするために耳を大きくしたりと、DNAを変化させることで子に伝える形質を変え、進化してきました。
そんなDNAはとても高度なつくりをしています。このつくりは長年の進化の間に変化してい来たのでしょう。そんなDNAの構造について学んでいきましょう!
ワトソンとクリックが発見したDNAの二重らせん構造はかなり合理的な形で、2本の長い鎖がらせん階段のように、規則正しく巻かれています。
DNAが二重らせん構造をとることのメリットは
・コンパクトで丈夫なこと。
・複製をすることができること。
という2点です。
らせん状に巻くことで、そのまま縦に伸びるよりもコンパクトにすることができます。また、DNAの2本の鎖は水素結合という結合で結びついています。水素結合は弱い結びつきですが、らせん構造によってたくさんの水素結合ができ、強く2本の鎖が結びつくことができます。
結びつきが強いということは、壊れにくく、構造が安定しているということになり、生物の体を保つのに役立っています。
もう1つのメリットは複製をしやすいことです。
複製とは、染色体が体細胞分裂の際、2倍になって2つの細胞に分かれて入ることです。
染色体を2倍にするためには、DNAも2倍にしなければいけません。その時にDNAが二重になっていることが生かされます。
複製の際に、2本の鎖は端っこから1本ずつに裂けていきます。そして裂けた1本の鎖の反対側に新しい鎖ができます。この新しい鎖ができるメカニズムは後で説明しますが、二重であることで複製が可能になり、体細胞分裂ができます。
この2つのメリットを作り出すために、DNAをらせん状にしているわけです。生物の適応力はすごいですね!
DNAが表す言葉
DNAの役割は体の設計図であり、具体的にはタンパク質をつくることです。
タンパク質は分解するとアミノ酸になりました。つまり、DNAはアミノ酸をつくっています。アミノ酸は20種類あり、その組み合わせによって多種多様なタンパク質をつくっています。
では、20種類のアミノ酸をつくるには、どのくらいの情報がいるでしょうか?
DNAはたったの4文字で20種類のアミノ酸をつくっています。例えば、日本語なら51文字、英語なら26文字を組み合わせて文とつくり、文章にしています。
これと同じことをDNAが行っているんです。中学で詳しく覚える必要はありませんが、4文字はA(アデニン)、G(グアニン)、C(シトシン)、T(チミン)という4つです。
AとTがセット、GとCがセットになっていて、例えば二重らせん構造のAの反対側には必ずTがあります。なので、複製する時に裂けた鎖にAがあれば反対側にTがあるとわかるから簡単に複製することが出来るというわけですね。
DNAを使った技術
最後にDNAを使ったいろいろな技術を紹介したいと思います。DNAを使った技術は食料・医療・環境など様々な分野で応用されています。
遺伝子組み換え食品
遺伝子組み換えの大豆から作ったとうふが少し話題になったことがあります。遺伝子組み換えとはどういうことなんでしょうか?
今までおいしいイチゴを作ろうとした場合、おいしいイチゴと病気に強いイチゴから子を作って、おいしくて病気に強いイチゴをつくるというように、交配によってつくっていましたが、時間もかかるから体の設計図であるDNAをいじって、簡単に作ってしまおう!というのが遺伝子組み換えです。
短時間で簡単に作ることができるというメリットはありますが、遺伝子組み換えを行ったエサを与え続けたマウスが奇形の子供を産む確率がとても高かったりと、まだ問題はあるようです。
薬の大量生産
インスリンという化学合成すると手間で高価な血糖値を下げる薬は、合成でつくろうとすると大変ですが、大腸菌を使うとインスリンを簡単につくることができます。
どのようにするかというと、大腸菌の中にインスリンをつくるDNAを入れます。もちろんインスリンは大腸菌にはたらくことはないですが、大腸菌はDNAの設計図通りにインスリンをつくります。
大腸菌は無性生殖で栄養さえ与えておけば大量に増えるので、増やした大腸菌を集めて溶かすことでインスリンを取り出すことができます。
iPS細胞
山中教授が発見したiPS細胞(人工多能性幹細胞)は、医療の分野で大注目されています。
多細胞生物は生まれた時は受精卵という1つの細胞から細胞分裂を繰り返して成長していきます。
細胞はあるところで、役割が決まります。例えば、心臓になる細胞、脳になる細胞、骨になる細胞とわかれ、その役割を持ったまま分裂を繰り返してそれぞれ心臓、脳、骨になります。一度運命が決められた細胞は一生そのままというわけです。
しかし、iPS細胞は何の役割でも持つことができます。なぜならこれは受精卵のようなものだからです。そのため、虫歯を治したり、ハゲを治したりすることが出来ると期待されています。
iPS細胞は4つの遺伝子(Oct3/4、Sox2、c-Myc、Klf4)を運命が決められた(分化した)細胞に入れるという簡単な操作でつくることができ、すでにマウスの歯を再生したり、3Dプリンターを使って臓器を作ったりすることが可能になっています。
iPS細胞によって医療が爆発的に進歩することが期待されますね。
今紹介したのは一部で、クローンや青いバラ、DNA鑑定など様々に応用されています。
生物の分野はまだまだ余地が多いので、これからの進展を楽しみに待ちたいですね!
まとめ
遺伝子の本体は染色体の中にあるDNAである
ワトソンとクリックはDNAが二重らせん構造であることを発見した
DNAは様々な分野で応用されて活躍している
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