電流と電圧の不思議な関係
今までの学習で電流と電圧の関係がわかってきたと思います。
なんとなく電源からかかる電圧が大きければ電流も大きくなるような気がしますね?
ただ、そういうわけではないんです。
少ない電圧でも大きな電流を流す方法があるんです。
それは、回路の組み方を工夫することです!
今回は直列回路と並列回路にかかる電圧と流れる電流の関係を考えて、少ない電圧で大きな電流を流す方法を見つけましょう!
回路を作って電流の大きさを調べよう!
今回の実験では、乾電池を2つ直列つなぎにしたもの(起電力3.0V)を電源として利用します。
豆電球と乾電池を使って直列回路・並列回路を作って、それぞれの電流と電圧を測ってみましょう。
写真をよくみると、乾電池は同じ2つなのに豆電球の明るさが違うことがわかりますね。
これも電流と電圧が関係しています。
詳しく見ていきましょう!
直列回路の電流
直列回路を作って流れる電流の大きさを調べます。
電流を測る場所はこの3か所です。さっそく測ってみましょう。
記号で表すとこうですね。
結果はどうなるでしょうか?
電流計は直列つなぎでつなぐので、回路はこのようになります。
結果の写真はコチラで、各地点の電流の大きさを表にするとこのようになりました。
① | ② | ③ |
180mA | 180mA | 175mA |
表から、直列回路を流れる電流はどこを測っても同じということがわかりますね。
この結果は、豆電球が1つの時も同じでした。
電流計は「電気の粒が何個通ったか」を測って電流を測定しているから、1つの道しかない直列回路の場合は、必ずすべての電気の粒が同じ道を通ることになります。
だからどこを測っても電流の大きさは同じというわけですね。これを記号を使って表すとI₁=I₂=I₃と表すことが出来ます。(電流の向きは変えてます)
並列回路の電流
じゃあ回路に分岐点がある並列回路の電流の大きさはどうなるでしょうか?
この4か所を調べていきましょう。
分岐する場所で電気の粒が分かれそうな気がしますね。
②と③は分岐していますが、電流の値はどうでしょうか?
回路を組んだ例はこんな感じになります。
結果を表にするとこのようになりました。
① | ② | ③ | ④ |
450mA | 220mA | 220mA | 440mA |
となりました。
①と④の電流の大きさがほぼ同じで、②と③はその半分の大きさでした。
つまり、①を通った電気の粒は、上の②の道に半分行き、もう半分は下の③の道に行ったと考えられます。
そして、②を通った粒と③を通った粒が合流して④に流れたと考えると実験の結果と合いますね。
並列回路の場合は分岐点があれば、そこで電流は2つに分かれて合流することがわかりました。
記号で表すとI₁=I₂+I₃=I₄と表すことができます。
さて、直列回路の豆電球と並列回路の豆電球の電流の大きさを比べると違いがありますね。
それと、2つの回路の豆電球の明るさを比べてみると、同じ電池を使っているのに並列回路の豆電球のほうが明るかったです。
つまり電流が大きい=豆電球は明るいということでしょうか?
これについて考えていきましょう!
豆電球の明るさには電流のほかに電圧も関わっています。2つの回路の電圧を調べることで明るさの秘密に迫りましょう。
回路にかかる電圧はどのくらい?
直列回路の電圧
電圧計は並列つなぎで回路に組み込みます。なので、電圧計が測るのはつないだ2点の間の電圧(高さの差)でした。
そこで、直列回路のV₁₂、V₂₃、V₁₃の3か所の電圧をそれぞれ調べていこうと思います。
V₁₂は豆電球Aにかかる電圧を、V₂₃は豆電球B、V₁₃は豆電球AとBの両方にかかる電圧を測定しています。
回路を組むとこのようになります。
結果はこのようになりました。
V₁₂ | V₂₃ | V₁₃ |
1.1V | 1.1V | 2.3V |
この結果から、おおよそ豆電球Aと豆電球Bにかかる電圧は同じで、回路全体にかかる電圧はそれぞれの豆電球にかかる電圧の和になることがわかります。
式で表すとV₁₂+V₂₃=V₁₃となりますね。
電圧計の仕組みを考える
電圧計は電気の粒の落差を測っています。
今回の実験を例に説明すると、導線などの抵抗を除いて考えると、乾電池は電気の粒に3.0Vの高さを与えています。
2つの豆電球がこの高さを使って光っています。
乾電池によって3.0Vになった電気の粒の高さの内、豆電球Aが1.5Vだけ使って光ります。
すると、豆電球Aと豆電球Bの間の高さが1.5Vになります。
電圧V₁₂は1~2の間の電圧(高さの差)を調べているので、3.0V-1.5VでV₁₂は1.5Vになります。
一方、豆電球Bは高さ1.5Vの内、全部の1.5Vを使って光ります。
豆電球Bが1.5V使ったので豆電球Bより右側の電圧の高さは0Vになります。
電圧V₂₃は2~3の高さの差を測っているので1.5V-0Vで1.5Vになります。
そして電圧V₁₃は1~3の高さの差なので3.0V-0Vで3.0Vになります。
このようにかかる電圧を考える時はある地点の「高さ」がどのくらいで、電圧計はこの「高さ」の差を測っていると考えるととてもスムーズに考えられます!
並列回路の電圧
並列回路でも同じように豆電球A、Bにかかる電圧と両方にかかる電圧を調べてみます。
V₁₂は豆電球Aに、V₃₄は豆電球Bにかかる電圧を、V₅₆はA、B両方にかかる電圧を測っています。
回路を組みとこんな感じ。
結果は
V₁₂ | V₃₄ | V₅₆ |
1.85V | 1.85V | 1.85V |
となり、どこを測っても同じ電圧になっていることがわかります。
イラストで考えてみるとわかりやすいですが、電池が与えた高さは3.0Vです。
この3.0Vの高さを豆電球Aと豆電球Bの両方が0Vまで使うことが出来ることがわかりますね。
なので、それぞれにかかる電圧の大きさはどちらも3.0Vになります。
式にするとV₁₂=V₃₄=V₅₆となります。
並列回路ではどこを測っても電圧の大きさは同じということをおさえておきましょう!
電圧と電流の関係のまとめ
電流 | 電圧 | |
直列回路 | どこでも同じ | それぞれの和 |
並列回路 | それぞれの和 | どこでも同じ |
簡単に表にまとめるとこんな感じです。
直列回路の場合は、電流の大きさがどこを測っても同じで、電圧はそれぞれの豆電球にかかる電圧の和が電源の電圧でした。
並列回路の場合は、電圧の大きさがどこを測っても同じで、電流はそれぞれの豆電球に流れる電流の和電源に流れる電流でした。
電圧と電流を簡単におさえるポイントは「電流は粒の数」「電圧は粒の高さの差」と理解しておくことです!
電流は、直列回路はどこでも同じ、並列回路は和になる
電圧は、直列回路は和、並列回路はどこでも同じになる
電流は電気の粒の数、電圧は粒の高さの差とイメージしよう
コメント
コメント一覧 (6件)
目から鱗の解説でした!
並列回路で電圧が等しくなる理由を納得することができました。
ありがとうございます!
この様にして一つ一つ説明してくれる機会は、ひとつも有りませんでした。
ソコが分からないから置いて行かれる子供が多いのに、なぜ、ソコを皆誰もが揃って飛ばすのだろうか?というところを教えて頂きました。大変、感謝します。
最初は写真と回路のプラス(赤)・マイナス(黒)の向きが一致して説明されるのに、以降の写真と回路のプラス・マイナスが逆で説明されているのが気になった。
電流には本当に躓いたは。以下は愚痴です。
電気はプラスからマイナスに流れている。その流れを電流という。
しかしだ、実際は電子という存在があり、電子がマイナス側からプラス側に流れることで電気が流れているという。
なのに先の説明を訂正せず、今日に至るまで説明に用いる矛盾のおかげで学生の頃に躓いた。
さらによくないのは「プラス」、「マイナス」という単語のチョイスだ。センスがない。なぜ良くないか?以下に説明する。
電気が流れるのは電位差があるからというのがわかる。
電位差は水にたとえられて説明されることが多いのだが、水の流れのように高きところより、低きところに流れるとのことだ。そして、
プラス側が高く、マイナス側が低いと説明される。(プラス、マイナスの単純なイメージから思いついた作り話だろうか?)
だからプラスからマイナスに電気が流れると説明される。(いや、だから電子はマイナス側からプラス側に流れて電気がとるんだろ?オカシイだろ!)
電位差が高い低いで説明され、高きところより低きところに流れるのであれば、マイナス側の方が電位差が高く、プラス側の方が電位差が低くなければ辻褄が合わない!
となると、「プラス」という意味は0より大きい。「マイナス」というのは0より小さい。のイメージと合わない。ここでさらに混乱する。
従来のよくある電気の説明はこういった矛盾とイメージの逆転の問題を抱え、躓く学生を生み出しているように思う。いい加減に改めろ!と思う。
そして電圧計では「差」しかわからんから、どちらが高いか低いかはわからないだろうに。。
「マイナス」を改め「陰子」、「プラス」改め「陽子」として説明するべきで、
電気は陰子が陽子側に引かれ、導線内を流れることで電流が興る。この流れる力強さが電位差であり、陽子側が陰子を引っ張り寄せる力でもある。(高い低いでは説明しません!)
以上。
とても分かりやすかったです!
少し疑問に思った所があるのですが、直列回路の際は豆電球が1.5Vの電圧を使っているのに対し、並列回路では3.0V使っているのはなぜなのでしょうか
わかりにくくてすいません。それは構成ミスです笑
修正します!